アドラー博士が教える 子どもの考える力を引き出す魔法のひと言
星一郎
★☆☆☆☆
著者はアドラー心理学を取り入れた子育て法の第一人者とのこと。
本書に関しては内容が薄く、アドラー心理学の基本前提などには一切触れられていません。タイトルの「アドラー博士が教える」はほぼ無関係で、普通の語りかけ本と大差ありません。
余白や行間が多く、情報量が少ないのでさっくり読めます。
タイトルからするに、ターゲットは子どもが誕生予定の家庭〜小学生がいる家庭と思われます。
これから子どもを迎える家庭や、子どもが3歳くらいまでの家庭であれば、今後はこういう接し方をしようと温かく読めるのではないでしょうか。
ただ、およそ4歳以上の子どもと日々向き合っている人ならば、このように想定した通りに子どもが反応することはないと身に染みて実感しているはずなので「ふんふん、そう、なるほどね」とは読み進められないのでは。
7歳息子を子育て中の私が特に共感できなかったのは、語りかけ例と子どもの反応が出来過ぎていてわざとらしいところ。4例を抜粋する。
スポンサーリンク
弟や妹をたたいた時
「どうしてたたいちゃいけないのかなぁ?」
「だって、たたいたら泣いちゃうから……」
「そうだね。泣いちゃうよね。でも、それだけかなぁ?たたいちゃいけない理由をもうちょっと考えてみようよ」
「え〜っと、ボクの方が大きいし強いから、たたくとかわいそうだからかなぁ」
「ほんとね。たたいたらかわいそうね。かわいそうなことはしない方がいいよね。だったら、今度けんかしたらどうしようか?」
「たたかないで、口で言うようにする」
「そこに気がついたら、すごいよ」
たたいた直後の子どもは、興奮していてこんな考える余裕はない。
時間を置いて考えさせるとしたら、タイミングが難しい。
そして子どもはこんなに都合良く満点回答をしてくれるわけではない。
他人の花壇を踏んだ時
◯◯くんの家の花壇を踏み荒らし、◯◯くんのお母さんが怒って電話してきたため、お母さんは謝った。そして子供に対し…
「花は土とか水分とか栄養をもらわないと死んでしまうんだよ。それを根っこから踏んづけちゃったんだよね。それを◯◯くんのお母さんは悲しいと思っているんだよ。だから、元通りにして、水をあげないといけないとお母さんは思うんだけど、あなたはどう考える?」
「(花を踏んづけてしまってごめんなさい)」
「あなたがそう言えるんだったら、これから◯◯くん家へ行って、謝って、花にお水をあげることができるように頼んでみようね」
「お母さんも一緒に行ってくれる?」
「もちろんじゃない!」
これは菓子折り持って即座に謝りに行く案件でしょう。
根っこから踏みつけた花が水をあげただけで回復しませんよ。 著者は花を育てたことがないのでしょうか。
こんな謝り方をされた◯◯くんのお母さんの怒りが鎮まるわけがない。
この事例で考えてもらうことは、他者が大切にしているものを決して粗雑に扱ってはならないということであり、花が養分を取れなくなったことではありません。
この子は今後も友達のおもちゃや他人の家の壺を壊したり、壁に落書きしたりするのではないか。
母の財布からお金を盗んだ時
気付かない・知らないふりをして言うのがよいそうです。
「お金がなくなっちゃうのは心配だなぁ。だれか知らない人が家に入ってきて、持って行っちゃってるのかなぁ。今度なくなったら、おまわりさんに来てもらって、しっかり調べなきゃいけないね」
子どもにとって警察が来るのは大ごとなので、自ら「やめよう」と思う。
そもそもお金を盗むって失敗子育ての末期なのでは…。れっきとした犯罪。
お金を盗むということは、お金をモノと交換できることを知っていて、なおかつ自分で欲しいものを売っているお店まで行けることを意味する。
とすれば、この例は小学生中学年以上の子どもを想定していると考えられる。
その年齢に達し、お金を盗むようなスレた子が、こんなフワフワな当てつけに怯むものだろうか。これで済むなら、チョロいと思って再犯するのではないか。
この例など、育てている子どもの年齢ターゲットがブレている。
危険について
「赤信号でも車が来ないと渡ってる人、いるよ。いいの?」
「車が来ていなくても信号が赤なら、渡らないというのがルールなのね。最近は信号機の脇に点々が付いているの見たことあるでしょ。あれは、信号が変わるまでの時間を表示しているんだよ。点々が1個減るたびに、もう少しだよって、知らせているわけ。あれを見れば、あと少しで信号が変わるって分かるよね」
「ああ、そうなんだ。便利だね」
点々の話、必要だろうか?ルールだよ、で終わらせていいのでは。話題を逸らせているように感じられる。結局、この子は渡っていいのか悪いのか、考えることができたのだろうか。
全般に、著者は子育てしたことがあるのか疑問。
現実を知らない人が夢見がちに書いたものとしか思えませんでした。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
コメントはまだありません