読書
★★★☆☆
司馬遼太郎の文体は独特だが、この短編集では気になってしまった。ストーリーによっては気にならないものの、初期作品だからだろうか。
伊賀忍者の短編集かと思いきや、忍者に関する話は前半3編のみ。全体に多岐にわたり時代も様々なものを1冊にまとめた感がある。
忍者の役割や悲哀は切ない。特に下請忍者は老いてモノの役に立たなくなると小屋で布団も食事も満足に与えられずに死を待つのみ。また、忍者は婚姻できないため、人減らしのために供給された子供を修練することで頭数が確保される。
こうした忍者だが、戦国の世に果たした役割が世の中が安定したことで変わっていく。
タイトルにもなっている<最後の伊賀者>では、職を失いつつある忍者が叛乱を試みる。
現在においても、技術の進化でなくなる職もあれば、変容していく職もある。他人事ではない。
しかし、現在は寿命が60年ならいざしらず、人生100年時代にただ一つの「職」に固執して生きていくことはで難しい。社会変化に対応するよう自分を変えていかなければならない。
他作品でも自己の信念を貫く主人公が多いが、司馬遼太郎先生のご存命時代との変化を感じる。
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